11.29.2005

バタフライ効果(短)

蝶々さんはアフリカのサバンナ、優雅にお散歩中。

あちらこちら、アカシアの花の止まったり、サイのお尻に留まってみたり、気まぐれな蝶々さん。蝶々さんは上機嫌。風少ないし、雨が羽ぬらす気配ないし、春のアカシアの蜜がたくさん。パタパタ~、パタパタ。サイの鼻のあたりでパタパタしてたら、サイは大きなくしゃみ。何も起きなかった。

「ごめんあそばせ、サイどん。」

「いえいえ、蝶々さん。カユカユ。」

砂ぼこり舞い上がる。人間どもまたきた。いつも派手な登場。サイどんと同じくらいの大きさの、アレ。ジープとやら。辺りは砂だらけ。運悪く、小石が蝶々さんにめがけて飛んできた。足一本やられた。グシャリ。

「ギョエー」

激痛に蝶々、もがく。サイ、びびる。

「蝶々さん、大丈夫ですか?」

「・・・んなわけねーだろ・・・」

メラメラ怒る蝶々さん。
蝶々さん、サイどんの耳元でささやく。

「やれ。」

一人、帰らぬ者。

11.25.2005

一人でオフ会

「ママのこと好き?」

「・・・キライ」

妻はかなりショックだったらしい。
どんな母親だってそうだと思う。
少し可哀相だったが、笑ろうてやった。
あ~あ、言われちゃったね~って。

親子揃って体調が悪かった。風邪とかで。そんな状態で四六時中一緒に過ごせば大人子供問わずケンカの一つや二つはするもの。妻はイライラしてしまい、オモチャを片付けない息子をついついキツ目に叱ってしまったらしい。さすがに言い過ぎたと思った妻はゴメンね、と息子にあやまり、まだグスングスンしてる息子に尋ねた結果がこれだ。その後も妻は息子を名前で呼んだり、一緒に遊ぼうとしたり努力したが、しばらく相手にしてもらえなかったらしい。僕が帰宅したころにはすっかりいつも通りに甘えていたが。

ノウミソに収められた限られたボキャブラリーで一生懸命伝えようとしているわけだ。息子だって。怒りんぼのママは恐い、だとか、もっとやさしくしてくれよう、とか。表現するための材料がないのだから仕方ない。好き、と聞かれてキライ、というしかないのだ。きっと息子も「あ゛~もう!」と苛立ちを感じる時もあるだろう。好きなんだけどキライ、キライじゃないんだけど好きじゃないよ。親にしちゃあ良いショック療法なのかもしれない。でも、いずれは色んな表現をできるようにしてやりたい。じゃないと狂っちまう(笑)。

人の感情って複雑だと思う。ましてや感情というのを言葉にして誰かに伝えるのは簡単なことじゃない(ましてや音楽なんか加えたら、どうとらえられてるなんか検討もつきやしない!)。大人になってそれなりの言葉の数を操れるようになっても、喋りすぎたり、言葉足らずだったり、言葉を選び間違えたり。

言葉を選びすぎたり。僕は言葉を選びすぎて失敗することがある。

喋りたくなくなるときもある。
解釈も、思考も、憶測も、何もかもオフにして。
でも、いつまでもオフしてちゃあ何も進まないんだよね。

11.22.2005

握手の距離を保つ

先週末、海外から兄が遊びにきた。
あったのが実に6年ぶりだったそうな。
ヤツは恐らく、高校以来帰国していない。
ヤツは立派なヒゲをはやしていた。
一段と日本語が下手になっていた。
そして、気付けばヤツはアメリカ国民になっていた。
医者になっていた。元気だったのでなにより。

相変わらずというか、終始ストイックなやりとりだった。
ほー、であるとか、うん、であるとか。へぇ、とか。
難しい話もいろいろ、お医者さんて大変なのね。結構。
6年分の人生相談をする意味もなく、互いの状況を話すのみ。
生命反応を確認しあう。最低限、「大丈夫なのか?」の程度。
それしかできない。そういう関係。
別に不自然でもない。

東京を案内してくれと一言で頼まれても、簡単でない。つまらんことを言うが、東京も香港もニュウヨウクもロンドンも似ているっちゃあ似ている。大都会に行けばどこも、所詮スターバックスが栄える環境となっている。全てが違う、うゎぁ、じゃなくて、逆に違いだとか、キラキラした何かを探すのに一苦労する。別に観光しにきたわけでないかもしれないが、なんとなく。幼い頃の面影があるモノを見せてやりたかった。昭和というやつ。大都会そのまんまではシャクにさわるので。出来る限りディープな下町中心に案内した。タイヤキ屋さんとか、狭すぎる飲食店とか。ルノアールとか。駄菓子屋とか。錦糸町とか。終いには、銀座に連れてってくれと頼まれた(爆)。お土産はやはり必須らしい。そこばかりヤツもまだまだジャパニーズなのかもしれない。ネタ切れすると、オマケでお台場に連れて行った。イヤミのように空がアホのようにデカかった。

永遠と続くショッピングセンターを見渡す兄は言う。

「いやぁ、やっぱり、この国は資本主義を受け入れたのね。」

ええ。そうなんです。

ヨメに聞かれる。

「再開したときは抱き合ったりしたの?」

んなバカな(笑)。

11.21.2005

ダンテは知ってる

ダンテ、アタマ良さ悪さよく分からん。
ということアタマ悪いということかもしれんそれでエエ。
アタマ所詮モノに過ぎず。
ステキな取れない帽子に過ぎず。

IQ30、一生アリンコを見つめていたいと決断し実行する者、優れた人間、きっと賢。方やIQ150、天才天才とおだてられ好きかどうかも分からずごもっとも天才デス道歩む者がいるとすればIQ無駄遣いに過ぎず、アタマ悪いとしか言いようなく。でもダンテ天才でない、憶測に過ぎない。でも、未だこの大学あの大学よりいいトカ、この仕事、この会社、このヨメ、このアタマ、この帽子、地位イチイチイチ線引くことに命懸けるウンコったれ腹立たし。ウンコ大学一番アタマ切れるヤツ、天才大学一番ドタマ悪いヤツ比してよかろ?よかろ?よかろうも?意味なかろうも。

ステキな取れない帽子取っ替えっこするべか?アホウ。
ギタァあるまいし。コレ一つ。ヒートーツー。
磨いて磨いて、それなりに。それなりに。
あとさ手、あとさ足、あとさ口、アナだらけの知恵、で、距離稼ぎに勤めぃや。

11.15.2005

人のせいにする

私が与えたミカンに、サルは夢中だ。
一応、鎖は私が持っている。

サルって、今私の隣に座っているサルのことである。中国大陸の奥地の奥のそのまた奥の、田舎バスに乗っている。サルを挟んで、私が雇っている、現地の通訳の者がションボリ座っている。若い男だ。この男の通訳ミスのせいで、私はこのような状況になってしまったのだ。あ~あ、と、わざと通訳が聞こえるようにため息をしてみる。横目で彼がどう反応するか、ちらっと確認してみる。うつむいたままだ。いつもはうっとうしいくらい話す男なんだが。私が少し怒っただけでこれだけ落ち込むとはいささか心外。よく見るとまだまだ若い。ちょうど二十歳を過ぎたくらいか。

私はこの数週間、大陸で旅をしている。ある村のバザールでは、珍しい動物を沢山取り扱っていた。サルやカメ、イタチや様々な鳥。サルを触ってみてもいいかと尋ねるつもりだった。触るだけでも金はとるぜ。日本円だったら1,000だしな。と商人は言う。思わず1,000円札をそのまま商人に渡した。サルは私の肩に乗ったり、ポケットを探ったり。ところが、満足してサルの鎖を商人に返してやろうとすると、商人は鎖を受け取ろうとしない。

「あんたに譲るよ。1,000円ももらったんだし。」

「困る。」

「こいつにやるエサはもうないんだ。頼むよ。」

通訳を通じて20分くらい言い合いをしたが、一向に相手は譲ろうとしない。どうやら、私はこのサルを買ってしまったようだ。仕方がなく、旅がてら、商人がサルを仕入れた街に行き、買い取ってもらうことにした。そしてこのバスにのっている。

11.13.2005

秘密を教えてあげる

もしかして、僕は、化け物なのかもしれない。

少年はある発見をしてしまった。手のひらを口元までもってきて、そっと。ふぅーっと吹く。冷たい。はぁーっとはく。温かい。ふぅーっ。はぁーっ。ふぅーっ。ママに教えてあげたい気もするけど、どちらかというと、なんだかこればかりは、明かす気にはならない。よく分からないけど秘密にしておくべきだ。両手を口元までもってきて、はぁーっ。

友達もそうなんだろうか。いや、友達にもやってもらって、ふぅーもはぁーも同じだったらバカにされる。やめておこう。僕は化け物かもしれないけど、それはそれで大丈夫だ。温かいのも、冷たいのも出せるんだけど、誰にも教えない。

うんと練習したら、僕はヒーローになれるかもしれない。火を吐いて悪者をやっつけたり、雪女みたいに冷たい息を吐いてカルピスを凍らせることだってできる。何日、練習したらできるのだろう。ピアノのお稽古は一生かかると先生は言っていた。毎日練習したらできるのだろうか。

でも、ヒーローになったら、本当の名前は言っちゃいけないんだろうな。

ずーっと内緒。

ずーっと。

ずー・・・っと。

誰にも言わずに・・・。

・・・。

「ママー」

11.12.2005

木枯らし一番

というヤツらしい。季節の言葉に弱いです。冬を知らせる風らしい。
北風小僧の寒太郎はこいつを歌ってるに違いない。
毎年寒くなると、この歌を口ずさみたくなる。

ひゅーん、ひゅーん。ひゅるるーんるんるんるん
ふゆでござんす
ひゅるるるるるるん。

ひゅーん、ひゅーん。ひゅるるーんるんるんるん
さむぅござんす
ひゅるるるるるるん。

ここがすごく好きです。このコーラスだけでも、何度歌っても飽きない。

私が働くオフィスビルの喫煙所は外にあります。
ちょっとしたテラスになっていて、気づけば数少ない木々が枯葉を落としていました。

木枯らし一番とやらは気まぐれに落ち葉を渦にまとめたり、一つの方向に寄せたりするけど、最後には必ず、ええぃ、と、辺りに散らす。子供が積み木を積み上げては倒し、繰り返される動作を連想させられる。楽しい。

11.07.2005

アメとムチ

ボリューム感のある若い娘が土砂降りの中、傘をさして歩いている。

言っておくが、太りすぎているわけでない。つくべきところについているだけであって、キツメのワンピース、いわゆる「ボディコン」という衣装を着用しているため、そのボリューム感が良い意味で対外的には強調されている、ということである。下手したら少しくらいはみ出ている。が、それは周囲を不愉快にさせるものでなく、むしろ、通り過ぎる男たちは皆熱心に振り向く。ちょっぴりいやらしい意味も、人間の女性という生き物の美しさという意味も含めて、本当に良い感じの、ボリューム感、である。古いヨーロッパの油絵に出てくるような女性にもある、ステキなボリューム感。

そして、この娘は土砂降りの夜、傘をさして歩いている。

長い髪の毛がぬれているように見える。傘をさしているのに。

持ち物は小さなハンドバッグだけで、それもぬれてしまわないように、片手でそのハンドバッグを胸元に抱えている。晴れていればそのハンドバッグをルンルンとぶら下げていたに違いない。可哀相な良いボリューム感のある娘。傘をさして足早に歩いている。

容赦なく娘を叩きつける、無数の針のように。あたしは早く帰らないとお父様に怒られるのよ。楽しい夜ももう終わりだわ、終わり。楽しい夜は必ず終わってしまうのね。悲しいわ悲しいわ。しかもこの傘、役に立たないわね。本当に役立たずだわ。どこかに捨ててしまおうかしら。

降り始めた後にさしたって意味がないのに。

11.05.2005

小さな問題

今朝起きると、私はとても小さくなっていた。
身長はおよそ1ミリだったと思う。

苦しい苦しいと思って、目が覚めたら、私は水色の布に埋もれていた。枕カバーのシワにはまっていたのだ。とても、重かった。なんとか布をかき分けて、水面に這い上がった。ベッドを見渡した。北極は写真でしか見たことがないが、枕の頂上から見渡す、巨大なクレバスだらけのベッドは北極を思わせた。

おい、今日、仕事、どうすんだ。なんて考えてる場合でないのだが、この時間帯はいつも、出勤の準備を考えている。習慣というものは恐ろしい。いや、のんきなのか。1ミリであろうとそれはある意味変わっていなかった。その後から、次々と不安やパニックが襲ってきたのは確かなんだが。

何故こうなったのだろう。いや、何故こうなったかが分からないから、当然治す方法なんて分かるわけがない。じゃあ、何もしなくてじっとしていれば元の大きさに戻れるのか。それは数分後なのか、数時間後なのか、それとも数日後?このまま僕は死んでしまうのか。悪い夢なんだろうか。携帯電話は隣の部屋にあるから、助けを呼ぶこともできない。いや、この大きさでは携帯電話のボタンを押すこともできないか・・・。

ただ、ベッドの端にたどり着いたころには、巨大な窓はすっかり夕暮れだった。
ベッドの端からまっさかさまの地面があまりにも恐ろしくて見れなかった。

くたびれたので、何も解決できないまま、私は再び眠ることにした。

11.02.2005

後ろ向き匍匐前進

初めて受けた私立幼稚園の面接に落ちてしまいました。この場合、息子が落ちた、というよりは、親が?とでも言うべきなんでしょうか。ヨメはかなりショックのようで、電話で泣いてしまいました。私も悔しかったです。あぁ、無力。こういうことは、ストレートな「ダメです」なので、自分等の教育が、知らない誰かの見えないラインに至らなかった、と答えが痛々しく明確。意味不明だが、息子に対して申し訳ない気持ちになる。何を間違えたのか、なんて、そんな答えはないのよね。本人は親として受け入れるべく本人、でも育てたのは親。かといって、自分達が行ってきた教育方針を100%「まだまだ全然おっけいぃぃ!ビシィ」と親指立てて目をつむることはもはやウンコちゃん。

数年後には笑い話になってるといいな。

息子は確実に育っている。言葉も増えたし、元気にしています。まいっちゃうくらいイタズラするし、走るし、笑うし、要求してくるし、ワガママ言うし、おい、なんでこれでダメなんだよ!って思うくらい。親バカなんだけどね。会話と人見知りやね。やっぱり。色んな人に合わせなきゃな。前向きの原動力も見つけ出したつもりでいる。もっともっと、息子に話し掛けよう。もっともっと、一緒に遊んで、アホなことも沢山やろう。もっともっと、ヤツのやる気を誘い出そう。世界一アホで愛溢れる、ナイスなダディーを目指そう。

・・・家事の手伝いももうチビッと増やすとしますか・・・はぁぁ・・・。

昨夜ベース嬢をクビにしました。一瞬、「やめてもらいました」とでも書きそうだったが、なんかこういう遠まわしはアカンね。とにかく自分の価値観を優先した。他のメンバーの問題意識に耳を貸さなかったことも、思ってる問題をずるずる引きずった自分も悪い。我ながら相当デリカシーに欠ける言い方をした。勝手にスッキリした。残念ながら彼女は多分スッキリしていない。これは本当に残念。

必要あらば冷血上等、前進あるのみ。べらんめ。