4.30.2006

残酷な話

少年は気分がよかった。

お祖母さんからアメ玉をもらったのだった。

ソーダ味の、大きなアメ玉。ソーダ味が、大好きだった。

アメ玉をズボンのポケットに入れた。ポケットの中に、大きな玉がごろごろしていて、その存在感に少年は大きな充実感を感じていた。大げさに聞こえるかもしれないが、小さな子供がズボンのポケットを使う機会というのは案外限られている。財布を持ち歩いてるわけでもないし、携帯電話に追われる日々を過ごしてるわけでもない。歩きながらも、少年はときどき手をポケットに突っ込んでは、アメ玉の形を確認した。

ハッカ味だったりして。。。なんて悩んだり、どれくらいなめたら小さくなるのか、とか、お祖母さんの台所の引き出しには他に何が入ってるのか、とか。少年は想像を膨らませ、わくわくしていた。母親にも、見せてあげたかった。お手伝いしたから、こんなのもらったよ、と。

とてもあったかい日だった。アメ玉が溶けてしまうといけないので、残りの距離は、少年はアメ玉に手で触れずに歩いた。

家に帰ると、アメ玉が亡くなっていた。
ズボンのポケットに小さな穴だけが残っていた。

4.23.2006

ディフェンス

テレビを付けたら、ウルトラマンやってた。懐かしいので見た。いつの間にか、ポロポロ泣いてた。なぜかって。僕がテレビを付けていようといまいと関係なく、ウルトラマンは20年間以上も、週一回のペースで地球を救っていた。少し申し訳なかったのと、改めて「ウルトラマン」という職業の大変さを実感した。

作家のなすがままに作られた宇宙怪獣を、毎週相手にしてる。来週はどんなヤツか、来週も勝てるかな。次こそやられるのか。眠れない日も沢山あるのだと思う。しかも、ただ勝つだけじゃない。9回フルカウント満塁ホームランが期待されてる。絶体絶命からの逆転でなければならない。痛めつけられる前提で物語は構成されている。気の毒としかいいようがない。でもウルトラマンは「今週はちょっと」なんて言わないし、ちゃんと敵に立ち向かう。

ウルトラマンは口があるように見えるけど、しゃべらない。ストイック。地味?怪獣が出現するときは全然動揺しないし、ビジネスライクに戦うポーズをして現れる。怪獣を倒したあとも、ガッツポーズもないし、敵をけなしたりもしない。もしかして、瞳孔のない黄色い目が少し悲しそうに見える。なぜかって。先週も同じだったから。来週もきっと、同じだから。

先手を打ってナンボの世界になってる。ヤッタもの勝ち、言ったもの勝ち。こんなお手本ばかりでいいのか。その中で、変わらないウルトラマン。沈黙沈黙沈黙。守備守備守備。20年間以上連勝しているわけだから、それを継続させるプレッシャーは計り知れない。

僕は古くてバカだから、ずっとウルトラマンを応援している。

4.18.2006

いつかの運動会に備え

昨夜、近所の公園で走りました。
シャカシャカズボンをはいて、古いトレーナーを着て。
走ったといっても何年ぶりだったので、長持ちはしませんでした。
残念ながら、私の身体はもう若くないようです。
努力をしないと、若くいられない年になったようです。

考え事をするにも、考え事をしないにも、走るというのはいいです。しんどくて、どっちみちなにも大したこと考えられませんから。汗とか鼻水とかよだれとかがでーっと出てるわけですから、人生とか今後のこととか、その間はお預けになります。その場の本人は本気で、今、俺、死ぬかもと思ってるわけですから。しかし、走り慣れてしまった日には、その効果が得られなくなる、ということになるのかもしれません。当面はその心配はしなくてもよさそうですが。てか、今日の筋肉痛を乗り越えて再びあの公園に挑む気を起こすのが、実は急務なのですが。

軽やかに走りたいと思うものですが、どう頑張ってもドスン、ドスン。重いのです。体重も足元も。太い。太いといえば、人生。太く短い人生を、なんて美徳があるようですが。あまりよく分からないです。いや、別にいいんですけどね。長くしたら細くなるのは、うどんだけでいいのかなと思い。なんなら太く長く生きりゃあいいねん、と思い。いやいや、本当にくだらない。

走り終わった後のタバコは格別に美味いです。
いつもこんな味がすれば、もっと吸うのにな。

4.17.2006

業務連絡

カバー曲を追加しました。もしよろしければ、
右の「その他音源」のメニューからお聞きください。
子供のころからキレイだなぁと思っていたメロディーです。
しかし、ミックスが、適当です。声でかすぎ。です。あしからず。

クリスマスの曲です。

4.14.2006

カリフォルニアの夢

男は手ぶらだった。連れもいない。
今日はたまたま、一人で昼食をとろうとしていた。
雨が上がり、よく晴れた日だった。少し肌寒い。

昼頃のオフィス街はサラリーマンやオフィスレディーでにぎわっている。二人組や三人組が多い。大抵の連中は行先が決まっているので、足早に目的地まで一直線に歩く。この男のように、一人の者はウロウロし、迷う割には大抵ラーメン屋か牛丼屋のような店に流れ込んで行く。

男はファミリーレストランに入ることにした。広い席でくつろぎたかった。

「お一人様・・・ですか?」

「ん、あ、うん」

若いアルバイトの子は多少戸惑ったようだが、すぐ男を四人かけの席に案内した。店には四人かけの席しかなかった。男は大きなメニューを新聞のようにテーブルに広げ、アゴを片手に、ゆっくり写真を見つめる。数分後、呼び出しボタンを押して、ウェイトレスにコーヒーとエビグラタンを注文した。

しばらく待つと、ウェイトレスがコーヒーを持ってきた。お客様申し訳ございません、という。エビグラタンが品切れなので、他のご注文でもよろしいでしょうか、と。申し訳ございません。

「ん、あ、うん」

4.13.2006

新芽がでるころ

スタジオがある代々木から、総武線の最終電車にのりました。最近、雨の日が多いです。生暖かくもなってきたので、電車の中はモワモワムシムシしていました。生乾きの洗濯物のような、カビの匂いがほんのりとしました。

こういう日の乗客は、いつもよりおとなしめに感じます。飲み帰りの連中も含めて、なんだか静かです。服や持ち物がぬれてたりすると、動くともっと濡れたり、他人を濡らしたりしてしまうので、比較的動きが少ない。床が滑りやすい。モワモワムシムシした空気の中で騒ぐと、いつも以上にヒンシュクな気がします。理屈はよくわからないのですが、そんな気がします。みんな不機嫌なんだから、みんな不機嫌でいようよ、的な。

背の高い、50代くらいのスーツがドアに向かって立っていました。私はドアの脇に立っていましたが、よく見るとなかなか立派なスーツを着ていました。どこかのいい会社の管理職でもやってそうな。目が大きくて、福耳で、髪の毛はあまりない。でも、佇まいがどうもおかしい。酔っ払ってたのか、それとも単純に気がふれていたのか。うなったり、時には子犬みたいにクンクン鳴く。ムンクの叫びみたいに顔をグシャグシャにしたり。終いには、ドアの窓ガラスに頭をゴンゴン叩きつけはじめました。

やかましくはなかったんです、別に。その静かな空間の一部として、クゥーン、クゥーン、ゴンゴン、ゴンゴン、という雑音が溶け込んでいたように感じました。それにしても、こんなに悲しそうな酔っ払い(或いは気がふれた人)を見たのは初めてでした。電車の酔っ払いって、ステレオタイプですが、何かと怒ってる、という印象しかなかったので、意外でした。

4.12.2006

真夜中のチャップリン

仕事部屋が散乱してる。マイクとかケーブルとか、楽器が、機材が、ピックが、アンプが、僕が。踏み場があまりないから、若干危険だ。

「レコーディング」を試みてる。前からちょっとやって見たかった、他の人の曲がある。カッコよく言えばレコーディングなんだけど、確かに「音」を「録音」して「重ねてる」んだけど、今の僕においては総じて「たいあたり」という表現の方が合ってるかもしれない。4畳しかない部屋だから、ギターを少しでも動かすと不意にどこかのケーブルを引っこ抜いちゃったり、どこかのツマミを少し回しすぎたりすると、爆音がヘッドフォンに流れてアワワどこのツマミだったっけオロオロ、となったり、マイクに感電したりコケたり。おまけに隣で寝てる人たちを起こしてはならないので、全ての作業がスローモーションで行われる。大声は出せない。

マトモに聞ける音がパソコンから流れ出てくれば、それはそれで小さな成功に喜ぶ。楽しい、これが。レコーディングにおいては全くの素人根性であると思うし、ある意味それを誇りにも思ってる。エゴであろうが、荒削りであれ、自分で作ることによって伝わるモノが少しでもいい方向に転ぶと信じてたりする。エンジニア職を軽視するつもりはサラサラないんだけど。当然、僕もそういう技術を身につけたことには越したことはないと思うし、狙って荒削りにしてるわけじゃない。でも、究極的には全ての音がピカピカで、全てのツブがびっしり揃って無くてもいい。できれば、リズムとかテンポとか、自分の中で育てるようにしたい。それを達成するためにも、少しずつでも自分でレコーディングを経験しておきたい。

サポートのベースさんが、レコーディングするとすごく演奏が上達するよって。へぇ、それって、演奏に集中するから?って聞いたら、いや、ひたすらやるから、と。

いつか胸を張っていいものを発信したいと思ってるよ・・・。

4.11.2006

空は黄色くない

空は青いんだ。

太陽からの光は、色のスペクトルからなってるんだよ。赤、橙、黄、緑、青、藍と紫の七つの光から。空気の中にある水蒸気とか不純物が光を散乱させてるんだけど、七つの色のうち、青い光の散乱が一番多いから、空が僕らの目には青く写るんだ。

でも、本当のことを言うとね。

お日様が黄色いからお空が青いんだよ。

お空も黄色だったらお日様が見えなくなっちゃうでしょ?

青がね、好きなんだよ。

サンタさん?

そういうことは

ママに聞いてみようか。

4.07.2006

スフィンクスの問い

生きていく中で、答えの出ない問題はゴマンとあります。同様に、
生きていく中で、ちょっと考えれば答えが出る問題もゴマンとあります。
問題の本質をみつめて、冷静に見極めることが大事だと思います。
前者として片付けてしまうのは実に容易。
笑ってごまかすのも簡単。
逃げてはならない。

ウンコ味のカレーがいいに決まってる。
宣言。

<カレー味ウンコのデメリットについて>
先ず、よく分かりませんが、これは非常に健康によくないはずです。キケン、という理由だけで、やらない方がいいです。カレー味がするため、一瞬の苦しみこそは逃れますが、その代償はあまりにも大きいものです。事実を知ってしまった人々はどうでしょう。数知れないほどのエンガチョをきられることになるでしょう。自分だけのためであったとしても、自尊心は大事にしておきたいものです。

<カレー味ウンコのメリットについて>
繰り返しですが、その場ではカレー味がします。ただし、です。五感を騙すことができたとしても、自らの心をも騙しとおすことは、本当にできるのでしょうか。自分にウソをつくような生き方で、あなたは本当に納得できるのでしょうか。長い目で物事を判断するべきです。

<ウンコ味カレーのデメリットについて>
ウンコは確かに臭いですが、実際の「味」はどうなんでしょう。私には分かりません。不味そう、という印象は誰もが抱いていると思いますが、「どのように」不味いのかは分かりません。殆どの人においては未体験なわけですから、問題はウンコという名称に係わる先入観だけにあります。事後、「すげーよ、ウンコ味だったよぉ」と言える人はいないんです。「ウンコってこんな味だったんだ・・・」なんですね。

<ウンコ味カレーのメリットについて>
ウンコを食べていない。

ごめんなさい。

4.05.2006

カワウソの仲間達

息子のいたずらがエスカレートしてきた。

私の仕事机の引き出しをあさったり、排水溝にオモチャを突っ込んだり、本をやぶったり(気に入ってる本はやぶらない)、散歩中に水たまりでバシャバシャしたり、ヨメのケツをつねくったり(どこで学んだのだか・・・)、用を足してるときにドアを全開にして逃げる。本人は注意されることを分かってる、というか、ニタニタしながら、親の表情を伺いながら待ち構えている。ある種のスリルを感じているのかもしれない。

やったなコノヤロという感じで注意すると、ゲラゲラ笑う。まれに、ガスコンロ級にキケンないたずらをした場合は本気で怒るわけだが、そのときはメソメソ泣いてしまう。

専門家にいわせてみれば、親子の信頼関係を築き上げることにあたって、これは重要な成長過程だとのこと。子供の立場からすると、親の反応を試す必要あって、ちゃんと相手してもらってるのか、それを確認していることが重要だという。僕もそれは正しいと思ってる。「あんまり」怒ってはいけないらしい。いわば、許さざるを得ない。子供の特権。

-----

ウソをつくことは、たしかにあまりよくないと思う。信頼を失うし、自分もイヤになっちゃうし、後始末も大変だ。だからといって人はウソをつかないわけじゃない。色んな場面、色んな理由でウソは用いられる。必ずしもやましい場面だけじゃない。何かを守るためのウソ即ち貫くウソ、思いやりのウソ、何の害もないウソ、笑いをとるためのウソ、自己暗示のウソとか。当然、面倒くささからなるウソ、隠すためのウソ、傷つけるためのウソ、金儲けのためのウソ、身を守るためのウソ、といった醜いのもあるんだけどさ。

そう思いたくはないけど、自分だってウソついたこともあっただろうし、そうとなると、ウソをつかれることに100%恨みきれない。のよね。繰り返しだけど、総じてウソはよくないと思うんだけどね。下手すると人が傷つくわけで。

ただ、子供以外につかれる、「試すためのウソ」だけは許せないなぁ。
なぜか。みっともなくて。それが一番悲しいウソかもしれない。

4.04.2006

クラッチってなんだっけ

僕には夢があります。

それは、いつか750ccのバイクを乗り回すことです。

別に長い旅じゃなくてもいいんです。皇居を一周するくらいでいいです。そして、速くなくてもいいです。渋滞でもいいんです。ただ、自分が一人で、何も考えずに750ccのバイクに乗れて、転ばずに動かすことが出来ればいいんです。人に見られなくても知られなくてもいいし、記念写真もいらないです。一度だけでいいです。

中古でもいいです。ホットピンクとか紫でなければ何色でもいいです。ハーレーでもいいし、ホンダでもカワサキでもなんでもいいです、メーカーは。グルルル、とうなるでっかいエンジンがついてれば。エンジンをふかしたり、突然車線変更したり、人に迷惑をかけるような行為はしません。

あと、実際皇居を一周するのに何分かかるかは分かりませんが、運転してる時だけは何も考えたくないです。バイクを運転してることだけのことを考えていたいです。終わったらバイクの運転の仕方も忘れてしまってもいいです。

免許はいりません。
運悪く、警察に止められたら困りますが。

夢なので、人に自慢できるような理由はないです。
夢なので、努力はしないでおきます。