11.29.2006

業務連絡:ライブ



明日11月30日、ok city okのライブに参加させていただきます。
ギターとフィドルでがんばらせていただきます。
急な話で恐縮ですが、ご都合が合うようでしたらぜひ。

ok city okも私も今年最後のライブです。場所は、吉祥寺のPlanet K(http://www.inter-planets.com/pk/index.html)で、出演は21:00頃になります。

2006年はいい年。
きっと楽しいライブになります。

アンドロメダ

視線を感じた男はテレビから目を外し、テーブルの方に振り向いた。テーブルに座る友人と目があった。じーっと見ている。友人は開いたスケッチブックを片手に、チャコールの鉛筆で何かを書いているよう。

「何見てんだよ。惚れたか。」

と男は冗談交じりに友人に尋ねる。

「バカ、お前。」

友人は再びスケッチブックに熱中する。
顔を上げては男をチラッと見て、再び書く。

気にならないわけがない。男は立ち上がり、テーブルの方に歩く。ちょっと見せてみろよ。笑わないから。やめろよぅ、いいじゃないか、と幼稚なやりとりが炸裂する。友人はとうとう、ちょっとだけだぞ、と男にスケッチブックをしぶしぶ渡す。スケッチブックはまだ新しい。この一枚の書きかけの絵しかない。

「気味悪いな、この絵。なんで俺の顔なのに、長髪なんだよ。・・・これオッパイか?」

「ウケるじゃん。似合うよ。君、女顔だから。」

「ウケねぇって。うーむ、でも良く書けてるんだがなぁ・・・。やっぱり複雑だよ。俺は。」

「だろうな。」

「なんで?」

「いや、別に。」

「おいおい、ふとやることにしては失礼だな。」

友人は言う。どっちだっていいことじゃない、と。

「服でも書き足してやろうか?」

11.28.2006

ロミオとジゥリエッタ

五月雨ロミオのお母さんはイタリア人だから、ロミオという名前がつけられた。周囲には勘違いされがちだけど、お母さんはシェイクスピアの「ロミオ」を意図したのではない。更に言葉の歴史をさかのぼると、「ロミオ」っていうのは「ローマへの巡礼者」という意味らしい。両親は長いこと日本で暮らしていて、ロミオは生まれてから一度もイタリアに行ったことがない。半分だけでも、イタリア語がしゃべれなくても、自分のイタリアの血筋にも誇りを持って生きてもらいたい、という母親の願いが込められた名前だった。

本人はあまり自分の名前を気に入っていないようだ。ただ、高校生までにもなってどうこう両親に文句をつけたところでどうにもならないと理解している。今は、ただひそかに嫌がっている。同級生にはよくからかわれる。女子と普通に言葉を交わしただけで・・・まぁ、想像はつくだろう。からかいやすい名前だった。母親の名前がたまたまジゥリエッタであったということも、ロミオの我慢の負担を悪化させた。男友達はこれといった悪意を持ってからかってるわけでない、でも、ロミオは彼らが思っている以上に苦痛だった。

そんなロミオも全然悪いヤツではなく、からかわれながらもある日、彼女が出来た。名前は小酒井安子だった。安子は心優しい女で、ロミオをハーフだからといって特別扱いをしない少数の一人だった。ただ、付き合うとなると安子も被害を受けないわけでない。いじめとまでは行かないが、不快な思いはボチボチしたみたいだ。

ロミオも安子も両親が共働きで、放課後はどちらかの家に行って、夕方まで時を過ごすのが通常だった。時には散歩をしたり、ファミレスで映画の話をしたり、どちらかの家で抱き合ったり、一緒にテレビを見たり。普通の付き合いというものがあるのであれば、限りなくそこらへんの高校生のアベックと似たような付き合いだった。

18時くらいになると、これから帰宅すると母親から電話がくる。
いま、あなたどこにいるの。

安子と一緒だよ。

11.24.2006

業務連絡:ライブ、他

日曜日にライブをやります。出演時間が決まりましたので、報告させてもらいます。相当緊張して参りますので、是非その姿を見届けてやってください。取り返しのつかないことを沢山してしまいそうです。それでもきっと楽しい。きっと。

11月26日(日)
LIVE labo YOYOGI
http://www.yoyogi-labo.com/

「月の出る夜は歓喜の宴 」
出演:私。小川サカナ/ビッテルズ/mishearing/Freeze
開場:18:00
開演:18:30(私は一番手なので18:30に始めます)
予約/当日:1,800円/2,300円

メール(hinamike@khaki.plala.or.jp)でお名前と人数を教えてもらえれば、予約のリストに加えさせていただきますのでお気軽にどうぞ。キャンセル料はありませんので安心です。

あと、CDを配り始めます。是非、聴いて見てください。ご希望の方はメールでお名前と住所を送っていただければ、無料で一枚お届けします。個人情報については当然ながら慎重に取り扱わさせていただきます。会場にも幾つか持参するようにしますので、お気軽に声をかけてくださいね。



the hinsi etude by cayske hinami
"then a terrible sadness spread and the people wept for awhile"

1. goodbye, corpse
2. death march to bali
3. salamander
4. benjamin
5. the waiting song
6. a happy end to this war


宣伝ばかりで恐れ入ります。
それでは。良い週末を。

11.23.2006

男が薬を飲んだ

男は屋敷に帰宅すると、まっすぐ書斎に向かう。部屋は真っ暗だ。きれいに片付いたデスクの上をオレンジ色のランプがさびしく照らしている。男は椅子にかけ、滅多に開かない一番下の引き出しに手をのばす。中は古い書類や手紙が乱雑している。

医者に薬を処方してもらってから6ヶ月も経つというのに、一度も飲んだことがなかった。その間、痛みは単に辛抱できる領域をはるかに超えるものとなっていった。汗ばんだ手で、しばらく引き出しの中をあさると、薬局の白い紙袋が現れた。10粒の白い錠剤がアルミに包まれている。10日分の薬。いよいよ初めて飲む日が来た。もう、これだけ我慢したのだから許されるだろう。

男はため息をついた。小さな錠剤をパチっとアルミからはじき出す。右手で口まで運び、唇でピルをくわえた。くわえたまま、洗面所に歩いていった。鏡の前にたどり着くと、蛇口から冷たい水を流し、両手で水をすくい、ピルごと流し込んだ。

11.20.2006

グラマーガールの美徳

このアタシについて来れるもんだったらついてきなさい。
愛のソルジャーなのよ。甘くないわよ。
アタシみたいなのは、最高の幸せにしか興味がないの。

愛と美と男と力と金と仲間と成功と名誉と女とセックスと幸せとダイヤ。どれも妥協しないわ。絶対。グラマーと輝きの人生よ。レトロからモダンまで、フラメンコからロックンロールまで。ボヘミアンもアバンギャルドも。お好み焼きもフレンチ・キュイジーヌも。すべてアタシの手を通って、私の手により生まれ変わるの。妥協は、すでに負けなのよ。負け犬の気休めね。負け負け負け。口が悪かったらごめんなさい。あなたに何も恨みはないわ。でも、これがアタシの生き方なの。

手段は選ばないし、邪魔ものはこの手で殺してやるわ。
アタシとアタシの愛するモノの邪魔をするモノは。

アタシは頂点に立つの。そして人々は私を満月のように拝むの。アタシのことが嫌いだって?それはウソよ。本当は愛してる。アタシは知ってるの。ほっとけないんでしょ。そういうあなたは、ほっとけない自分が憎いの。多くの人は時が経てばむなしく死んでゆくけど、アタシは違う。アタシは永遠に歳をとらないの。この白い肌、この美貌はずっとずっと、なくならないの。

なぜかって、あなたたちが、そうさせないからよ。
生きて愛して羽ばたくの。
絶対。

11.14.2006

あまのじゃく

火曜日、夕暮れの出来事。

12、3才くらいの男の子が一人でファミリーレストランに入ってきた。モジモジしながら、レジの周りをうろうろしている。通り過ぎた、ウェイトレスのお姉さんが少年に気づいた。親はまだ駐車場かしら。ただ、いくら待っても親が店に入ってくる気配がなく、男の子のモジモジはますますエスカレートするし、顔はすっかり赤面していた。お姉さんは少し心配になって、男の子に話しかけることにした。きみ、具合でも悪いの?トイレ?すると、男の子はちいさな声で、ひとりお願いします、という。中坊が一人でファミレスなんて珍しいわね、と思いながらウェイトレスは男の子を席に案内した。母子家庭かしら。

「チョコレートパフェ。」

男の子は席に着いたとたん、メニューを見ずに大きな声で言う。
はいはい、かしこまりました。チョコパひとつね。ってかチョコパかよ。

男の子は一気にパフェを平らげ、再び呼びボタンを連打する。

「ハンバーグ。」

変な子ね・・・。
男の子はその時、すこし笑っていた。

「コーンスープ。」

クスクス笑っている。

逆なのね。子供って些細なことでウケるのね。
幸せよねぇ。。。
すこしムカついたが、相手も相手なので調子を合わせてやることにした。

「お客様、ドリンクバーはあちらですよ。」

男の子は喜んだ。

最後はお冷ね。

「はい、お水よ。これで最後ね。」

「お姉さん、ありがとう。じゃーね。」

「はい、ありがとうございましたぁ。」

男の子はそのまま席を立ってとっとこ店を出て行った。

お姉さんが、その後店長のカミナリにあったというのは言うまでもない。

11.08.2006

ガラパンコネスのコツ

三毛猫のミケポリスナ、メス三才のお話。

ミケポリスナが生まれた年は、ちょうど国際宇宙ステーション「ガラパンコネス」が完成した年。世界中の研究者に行き来させ、たくさんの宇宙のナゾや地球のナゾを解明するために作られた。多くの期待と希望を託された研究者達は鼻息荒く、次々と宇宙へ飛び立った。地球へ帰ってくる彼ら彼女らは英雄のように称賛された。

さて、一年経ってみると、突然ガラパンコネスに向かう研究者の数がどっと減ってしまった。研究のニーズが無くなったわけでない。何かがおかしい。地球の国際研究委員会は、最近帰ってきた研究者を呼び出し、ガラパンコネスでの近況を聞き出すことにした。

その研究者は言う。ガラパンコネスそのものについては本当に申し分がない。最先端の技術、エアコン、CD・MD・ラジカセ。ただ、それでも宇宙はとても孤独なところ。どの窓を除いても外は真っ暗。心細くなるのも仕方がないという。帰ってきた同僚も、再度宇宙に飛び立つにはどうも気が進まないという。国際研究委員会は頭をひねりにひねり、ミケポリスナを一年の間、常駐ペットとして送り込むことにした。ネコの他にもイヌやサルも候補として考えたが、イヌはやかましい上世話やかせのため却下され、サルは器用すぎるので設備を壊しかねないと判断された。ネコだったらモノを倒したりいじったりする恐れもなく、おとなしい性格ゆえ宇宙で接するには最も適任と思われた。

ミケポリスナのおかげで研究者の数も無事に回復し、国際研究委員会はその後も一年間のシフト制で常駐ペットを送りつづけることを決意した。

ミケポリスナは一年後、静かに任務を果たし、地球に帰ってきた。一緒に帰ってきた研究者はミケポリスナの入ったペット用移動カプセルを抱きかかえたままスペースシャトルを降り、前の夜からずっと待っていた飼主に引き渡した。研究者は軽く会釈をし、長い間ありがとうございました、と飼主に伝えた。研究者のファンがチラホラぶらついていたが、静かな帰省だった。

飼主は埼玉県の自宅に帰ると、移動カプセルを開けた。ミケポリスナは慎重に頭だけヒョコっとだしてから、ゆっくり出てきた。少しの間は戸惑っていたようだが、記憶をすぐ取り戻し、お気に入りの台所のテーブルの下にもぐりこみ、その下からにゃーと鳴きながらご飯をせがんだそうな。

11.02.2006

本田さんおめでとう

銀行口座の通帳におかしな記載がある。

「オメデトウゴザイマス ゴレンラククダサイ」
「03-xxxx-xxxx」

男は早速携帯電話からかけてみた。

「東京リズホ銀行です」

「あのう、通帳にオメデトウゴザイマスという記載があったんですが・・・」

「少々お待ちください!」

受付の女性の声は相当うろたえた様子だった。数十秒待つと、年寄りの男の声がする。東京リズホ銀行の頭取、安部と言います。おめでとう、本当におめでとう。なんのことでしょうか。ふと思った。先月買った宝くじか。大当たりでもしてしまったか。いや、仮にそうだったとしても、なぜ銀行の頭取と話す必要があるのだ・・・。

色々な思いが頭をよぎった。

いまどちらにいるんでしょうか?今ですか?そう、今。中野ですが。今から車を向かえに行かせますので、そこで待っててください。大手町の本部まで来ていただきます。さすが頭取だけあって、なぜか五分後にピカピカの黒のプレジデントが男の前に現れる。ここまでとなると、さすがに男は動揺した。

銀行の中央本部のカウンターを過ぎ、VIP席をも過ぎ、さらに長い廊下を抜けて、見たこともない豪華な応接室に案内される。その中には、10名ほどの年老いた紳士が待ち受けている。

「私はいったい、何があたったというのですか・・・」

男は声を震わせながら尋ねた。

「不老不死の身体です。10年に一度、抽選で男性を一人選んでいるのです。」

「いやあ、本田さん、本当におめでとう。自分のことのように嬉しいよ。」

11.01.2006

業務連絡




2006年11月10日(金)
shimokitazawa Daisy Bar
赤尾充弥 presents
「A & A projects side-B vol.1 "Rock & Romance"」
出演:ok city okPlat Home Nine、チェリースパイス、Beafland Kingdom
開場:18:30 開演:19:00
¥2,000+ドリンク別

以前サポートで参加させていただいたok city okのみなさんにお願いして、またご一緒させていただくことになりました。元気の出る音楽も、元気が出るからとても良いです。ご都合がよろしければ、元気が出る音楽な気分でしたら是非いらしてください。きっと楽しいです。

あと、ソロのライブが迫ってきました。
こちらも、是非よろしくお願いします。
何が売りかって、そりゃあ、とにかく、頑張るンですよ。
詳細は以下の通りです。

2006年11月26日(日)
live labo yoyogi
「月の出る夜は歓喜の宴」
出演:小川サカナ、瀕死エテュード、ビッテルズ、mishearing、Freeze
開場:18:00 開演:18:30
前売:1,800円 当日:2,300円