1.20.2010

太陽黒点を思フ

昔々々、お日さまが人とともに暮らしていた時代がありました。大層気持ちの良い方で、人々に愛され、まさに神として崇められておりました。そのため、人の気持ちに応えようと自ら農作物の具合をみては適度な雨を降らすなり、様々な形で人の生活に気をくばり、豊かな暮らしへと導いて下さりました。ただ、いくら親しい存在とはいえ、お日さまはお日さまで大変眩しい眼差しをお持ちで、人が直視することは出来ません。ましてや、間近にいるとなると人々はサングラスを一日中着けっぱなしにするしか方法はありませんでした。

民の不幸を望む王様はどこにもいないもので、新たに王座にのぼりつめた若い王子も例外ではありませんでした。彼は、小さいころから世界中を見回っていて、それはすばらしい見識を身につけておりましたし、おまけにハンサムでした。王座の直前は有名コンサルタントとして働いていたのでお金もありました。

いったいなぜ、人が皆それぞれサングラスをつけなければならないのだろう?お日さま一人がサングラスをかけてくれれば、私たちはうっとおしいサングラスを外すことができる。ああ、どれだけ生活が改善するだろう、どれだけお洋服のコーディネートの幅が広がるだろう!

王子は早速お日さまにサングラスをつけるようにお願いしました。お日さまは半信半疑でしたが、ものはためしと思ってサングラスをかけました。王子と人々はサングラスの呪縛から解放され、メガネファッションをはじめ、新たな自由を思う存分楽しみました。お日さまもサングラスが気に入ったようで、皆が王子の功績をたたえました。

ところが、何かに目覚めてしまったお日さまですが、お月さまをナンパしに出かけたきり、日々追いかけているのは目視できるものの、帰ってくる気配が一向にないのでした。

1.18.2010

カラスの子供

私の父、佐倉井昭一の通夜は土曜日に行われることになった。金曜日の仕事を終え、その日のうちに山形の田舎に向かった。突然のことだったが、幸い地元に身をおく兄の和義のおかげで、葬式の準備は着実に進められていた。原因は心筋梗塞だと知った。

紀子ちゃん大きくなったね、みないうちに立派になっちゃって。親族以外で顔と名前が一致するのは、近所の駄菓子屋のおばちゃんだけだった。

通夜ふるまいにいたその他大勢は、父とみな年が近そうな男ばかりだった。お互い顔見知りだったらしく、妙に賑やかな空気がただよっていた。喪服でなかったら、端から見てただの飲み会だ。駄菓子屋のおばちゃんは、私の違和感を感じとってか、耳にささやく。

町内会のみなさんよ。この連中はいつもこうでね、私はあまり好きじゃないんだけど。でも和義さんや紀子ちゃんがいなくなってから、お父さんも色々がんばってたのよ。去年の夏祭りなんか、ほとんど一人で仕切っちゃって。本当に、張り切ってた。思えば、昭一さんもこのバカの一員だったのよ。だから紀子ちゃんもお父さんに免じて許してあげてね。

一般的には不謹慎だとしても、私にとっては許すも何も、晩年の父をまともに知れずに当人は逝ってしまったわけで、いくら身内でも文句を言える立場にないと思った。この通夜は彼らのための集いでもあると、素直に思えたのだった。その後も何人かまばらに声をかけられ、ほう、娘かぁこりゃあ佐倉井のじいさんに似なくてよかったなあ、と言われたり、どさくさ紛れに見合い話をされても、不愉快じゃなかったし、むしろ父が死ぬまで楽しく暮らしていたことを知るようでホッとしている腹もあった。

その翌日、火葬場から直接タクシーをひろって駅にもどった。

1.08.2010

「岳」(ガク)

ヒナミケイスケです。

薄々気づき始めているのです。ウルトラマンや、親子モノ、極めてワンパターンなドラマにものすごく惹かれるタチのようです。単純というか、幼稚というか。いったい何なんでしょう(笑)。

「岳」(ガク)という漫画がとても好きです。石塚真一という人の作品です。山の救助隊員が主人公で、遭難した人の救助につとめます。なにせ山のことですから、遭難者は時々助かったり、時々死んじゃったりします。これが延々と繰り返されます。助かったり、死んじゃったり。助かったり、死んじゃったり。そればっか。

もし、床屋さんやマンガ喫茶などで「岳」にお目にかかることがあれば、パラパラめくってみてはいかがでしょうか。

1.06.2010

N極のS極がN極で

以下、とある駅のホームにて手話で話す二人の男女のやりとり:

(男)一人でどこいくの?

(女)何の用ですか?

(男)君とてもかわいいね。遊びに行こう。

(女)悪いけど、友達と約束があるから、行けない。

(男)どこで会うの?

(女)し ぶ や

(男)僕もし ぶ やだから、途中まで・・・

(女)断ります。興味ない。

(男)せっかく出会えたのに。

(女)それが?

(男)手話同士でしょう?

(女)そんな理由でナンパする人最低。

(男)めったに出会うことがないじゃない?くだらない用件かもしれないけど、僕は話す友達が欲しい。

(女)・・・。

(男)で?

(女)手が疲れたのよ。無駄な体力を使いたくない。あたしは、いまいる友達に話すだけでも精一杯なの。

(男)そうなんだ。

(女)そうなの。

(男)・・・残念。それでは、さようなら。

(女)さようなら。期待にこたえられなくてごめん。

(男)いいえ。迷惑かけたね。

(女)バイバイ

(男)じゃ。

1.03.2010

日常をかえせ

お正月明けの商店街は少しばかりさびしい所なのだけど、三日目にもなれば長い眠りから目覚める兆しが見えてきます。

ヒナミケイスケです。

風呂掃除をしたばかりでもったいなかったので、今夜は久しぶりに商店街の銭湯に行くことにしました。営業してるところは風呂屋以外では薬局、コンビニ、飲食店とパチンコ屋。人通りもちらちら、ちらちら。古着屋でセーターとシャツを600円で購入。

風呂場もガラガラでした。なぜだか銭湯のお湯というのは容赦なく熱い。でもなんか、これが気持ちが良い。湯でタコになってポカリをキューっと。冷たい風をあびながら中華料理屋へ。外からは薄暗くて、営業してるか危うかったけれど、中は繁盛してた。どうやら近隣の住民はみんなここに非難していた様子。タンタン麺と餃子を平らげる。見た目通りの味がする。美味すぎず、不味すぎず、ちょうどよい。革ジャンを着た恐そうな中年男が二人、真剣にテレビのクイズ番組を議論している。900円くらい。

帰りに100円ショップの店前においてあったみかんMサイズをコタツで食べる用に買う。100円ショップなのに314円なり。少し酸味がつよいが美味。