1.25.2012

歩く自己啓発

美登里野大地はホラフキだ。大がつくほどのホラフキかも知れない。ホラに優劣をつけること自体ナンセンスだが、そう言いたくなるほど美登里野のホラはすごい。

彼曰く。中学時代は茶髪の女子高生の彼女がいて、高校時代は勉強のできる喧嘩少年。東大とハーバード両方とも勉強せず奨学金付きで合格しておきながら両方けり、水泳(時々サッカー)でオリンピックの強化選手になるか真剣に悩んだ末に就職を決め、現在においては茶髪の女子高生の彼女がいるらしい。

ホラフキと書いたが、美登里野は決して嫌われ者ではない。社交的で礼儀正しく、性格も明るい。一歩間違えれば人望すらある。知り合いの大半は彼の性質をよく理解していて、その上、受け入れている。従って、彼のホラなり嘘はすべて無害だ。知人は呆れることを通り越して、次は何言ってくれるのか、もっぱら楽しみにしている。彼のホラで迷惑しているのはせいぜい、不名誉を被ったハーバード大学くらいだ。見事な身のこなしとしか言いようがない。

先日、私は同僚との飲み会に参加した。ちなみに美登里野は忙しいとかで欠席だった。同僚のみんなは美登里野の話になるともりあがる。上手くいくかなぁ、あいつ。大丈夫かなぁ。なんとかなるんじゃない?なるでしょ、図太いし。何考えてるか分かんないよなぁ、相変わらず。水球流行らせたいんだってさ。水球?なにそれ。ウォーターポロよ、ほら、オリンピックの。

1.15.2012

感想文

ようやく自宅に帰れたのは日曜日の夕方だった。アパートの郵便受けは留守中にたまってしまった新聞紙やチラシでパンパンになっていた。一番古い新聞の日付が1月10日だった。新しいのは今日、1月15日。

宇宙人と過ごした6日間を振り返ると、そんなに悪い体験ではなかったと思う。もちろん、できればこんな怖い思いはしたくないもので、あくまでも想像よりかは、だ。ただ、ごらんのとおり私は家に帰ってくることができている。怪我もなく、いたって元気だ。強いて言えば少し空腹だ。宇宙人の食べ物はレトルトっぽく、口に合わなかった。

人を誘拐するくらい大胆なくせに、宇宙船で一緒に暮らすと意外に内気で人見知りだということが分かった。誘拐してる側としてどっしりかまえていればいいものの、普段どんなものを食べてるのだとか、室内着の色はピンクのやつとブルーのどっちがいいだとか、中途半端に気を使おうとする。

そっちの話を色々聞くと、どうやら地球に来た目的もいまいちハッキリしていない。もちろんベストは征服することらしいが、あまりにも基礎的なポイントをおさえていない。人類が言語や宗教や思想がバラバラでまとまりが悪いこと、戦争に踏み切った場合核兵器を使いうること、最近はメタボといって肉体労働に適さない人間が増えてること、など教えたらいささかウンザリした様子だった。

私の憶測に過ぎないが、多分面倒くさくなったのだろう。