6.24.2012

神保町のオアシス

神保町の地下鉄駅は忙しい。となりの大手町には及ばないが、それでも半蔵門線、三田線、新宿線の三本がとおる立派なターミナル駅と思える。私鉄からの接続も考えると、いくつもの遠方ベッドタウンの人々が毎日運ばれてくる。私も神保町を通って通勤している。

そんな神保町の新宿線下りホームに注意をよせたい。平日の通勤ラッシュ時は数分毎に電車がとまる。遠くからだと京王線の果ての高尾から人を少しずつ集めて、ここ神保町と隣の大手町で一気に通勤者を吐き出す。

ここでは毎朝、私にとってなんとも奇妙なことが起きる。通勤者の波から外れたところにポツリと5人かけのベンチがある。ベンチ自体は何の変哲もないベンチなのだが、奇妙なのは毎朝2、3人ここに必ず腰掛けてくつろいでることだ。大体はスーツ姿の中年が読者をしている。毎回同じ顔ぶれではないが、誰もがとても穏やかな時間を過ごしているように見える。

何が変かというと少しややこしいことだが、ここに待つ理由が見当たらないのだ。この時間帯は急行電車は走ってないし、どのみちこの先に忙しい駅は大手町だけで、それも各駅でいける。ようするに、ここで座っているのは、ここに座りたいから、という整理しか思いつかないのだ。

そのうちいつか、このベンチに座ってどんな気分になるのか私も試してみたいと思っている。

6.21.2012

困った困った

第二地球の発見からちょうど一年経った。第二人類との交流は不気味なほど順調だった。

第二人類(彼らからしてみれば我々が第二人類に値する)の様相、歴史、文化、科学、哲学、言語、娯楽、政治など至る所で我々と似ていたので、早い段階で信頼関係が生まれた。警戒するのも同じで、お互い戦争の怖さや人の欲深さも知っており、何が何でもお互いの星を侵略しない協定も結んだ。星の行き来は海外旅行のような手続きでできるようになり、国際免許で道も運転できるし金のやりとりも可能にした。

昨日、二つの星の友好関係とさらなる発展を祝した盛大なパーティーが開催された。第二人類は食べ物を、我々第一人類は飲み物を担当する約束だった。料理は我々からしてどうみても寿司、フォアグラ、ピザとチョコレートだ。

もはや共通点が当たり前に感じはじめていたのが間違いだった。意外なことに我々が持ってきたコーラは彼らにとってはじめてだったようで、プシュっと栓をあけると驚いていた。ただの炭酸ガスですから、と説明して慎重な彼らにいいじゃんいいじゃんと勧めてしまったのだ。

いま、一口飲んだ彼らの大統領が口から泡を吹いて気を失ってしまっている。

困った。