7.20.2012

空を切る

上馬夏彦のペンネームで本を書いている。本名は西京太郎という。ただいま、スランプ中である。

文学の歴史をなめちゃいけない。何千年もの間、世界中のもの書きによって話のネタは食い荒らされている。限りある世界なねだから、当然ネタだって限られた資源だ。

私だってかれこれ20年は物語を書き続けてきた。他の作品と設定や人物像や題名がかぶるのはよくあることだし、ひどいときはストーリーが70年代のマニアックなSF作家のものとモロに同じだったこともある。

でもこれはもはや仕方のないことだと思えてきた今日この頃だ。スランプの突破口として旅行にいったりすることも、過去にごまんと同じ行為に出た作家もいるはずだ。

私の悟りはここにある。どうせ何を書いても他とかぶるなら、勝負はいかに他を知らないで書いて、シラを貫くことだと。

私は家中の棚という棚を空にし、全ての小説、映画、音楽をブックオフ行きにした。唯一残したのは広辞苑だけだ。

私はこれで生まれ変わった。さてこの白紙になにを書いてやろう。