1.30.2013

頭を離れない

動かなくなった主人は自宅のベッドに寝かせられ、その周りに写真や花が飾られた。ベッドの足元では生前可愛がっていたネコが警戒深く主人の亡骸を見ている。

私の実に勝手な想像だが、ネコは当然のように主人の姿を認識して枕元か腹部で蹲るのではないかと思っていた。実際は布団の間に挟まれたドライアイスで冷え切った状態で、ネコが近寄ろうとしないのも無理もないことだ。無理もないことだが、少しさびしく思えた。

1.12.2013

夫婦茶碗

あたしはシロ。この家に嫁いで早くも6年経ったけれど、気がつけばあたしも18才のおばあさんになってしまったわ。いま、主人の菊池にとても腹をたたせてるの。

いままで主人とは上手く行ってたと思うの。浮気は適当にしてたと思うけど、あたしがしっかりしてればあの人は必ず家に帰ってくると信じてた。お互いなんでもかんでもさらけ出さない方が気負わないと思うの。誰だって秘密の一つや二つあって当たり前だし、無いふりするほうがむしろ後ろめたいわ。だから外からおかしな匂いを拾って来ても、何日も説明なく家をあけても、ひたすら許してきた。

それでも夕べの出来事は度を過ぎてたと思うの。さすがにまいった。だってあの人、他のオンナを家に招き入れて、あたしの目の前でイチャイチャするのよ。サディストなのか、変態としか言いようのない。ショック過ぎてしばらく固まってしまったわ。オンナもオンナで、あたしに触れようとするの。爪はないけど引っ掻いてやったわ。

今朝は主人も反省したのか、だまって缶詰を出してきたけどしばらく許してあげない。