2.23.2014

ドロップキック

私の名前は琴塚太陽、6才。
年長すずらん組。

サクマドロップスが死ぬほど好きだ。好き度でいえば近所のみっちゃんを上回ってしまうほど。みっちゃんには悪いのでしばらく保留していた結婚のプロポーズを承諾しようと思う。

これまでは喉を詰まらせてしまうことを母が危惧したのか、ドロップスや蒟蒻畑とは一切縁のない人生だった。昨年の夏、目立たない父が「もうそろそろ大丈夫なんじゃないか」と珍しく発言したことがきっかけになったのか、私にハードキャンディを食べる特権が認められることとなった。はじめて口にしたときの衝撃が、いまも昨日のように覚えている。

私は断然メロンとイチゴがひいきなのだが、ハッカ味は何かの罰ゲームなんじゃないかと思っている。あのスースー感はどうもいただけない。他の味が一貫して甘いのに、あまりにも対照的かつ少数のハッカの存在がいびつで仕方ないのだ。私の中では白い悪魔と呼んでいる。

最近は人生について色々考えることになり、いつまでもネガティブに焦点を置くことがよろしくないと思えてきた。ハッカの存在も、何らか大いなる意味、事情があるのではと考えた。こんなにすばらしいメロンとイチゴを生み出したすばらしい人たちが、かよわい6歳児のトラウマを生きがいにしているわけがないのだ。

人生は甘いことばかりではない。でもつらいことがあるからこそ、甘いキャンディの喜びが大きいのだ。