3.20.2017

三十路デビュー

橋元ゆずる34歳公務員。満を辞して人生初のタトゥーを左腕に彫ってもらった。想い続けてきたものがようやく形となり、達成感に満ちていた。

見せたい相手は特にいない。おしゃれ好きの彼女や極道の友達はいないし、サブカルもエクストリームスポーツとも無縁。むしろ今後は見せたくない相手への配慮が大変だ。そこそこの大きさの代物である。両親の前、職場、大衆浴場は要注意で、基本的に衣類で隠すことにしようと思っている。

側からみればナンセンスかも知れない。隠す工夫をするくらいだったら、わざわざ身体に傷をつけてまですることではないと意見する人も多い。自己表現の手段は他にもいくらでもあるだろう、と。

橋元の場合、タトゥーが素直に好きだから、かっこいいからに尽きる。面倒なことに関しては、単にその代償に見合う価値のあるものなのだ。偏見を持つ人や、医療上の不便など、彼にとってはピアスを開けるときの痛みや傷跡に匹敵する程度の話だ。