2.15.2018

宮崎のチキン南蛮

従兄弟の祐樹と2、3年ぶりに会った。彼は私の二つ上の37才。子供の頃はずいぶん大人っぽく感じたが、お互いおっさんになってしまえば年の差は感じなくなった。

最後に会ったのは叔父の葬儀だった。亡くなる数ヶ月前から緩和ケアに入っていて、見舞いにホスピスにいくたびに祐樹と顔を合わせていた。ホスピスという空間は想像以上に穏やかで、笑顔があって、人間の暖かみ溢れる場所だった。反面、そこにいる人間すべてが身近に「死」という極限と向き合っている事実が合わさると、なんともいえない異様さを感じ、(言葉は悪いが)ある種ファンタジーの世界に迷い込んでしまった気すらするのだった。そんななか現世で歳の近い祐樹がそばにいてくれたことが心強かった。きっと彼もそうだったと思う。

「あの時は大変だったな。ほぼ毎週末通ったっけ」

「でも叔父さん、モルヒネの助けもあったんだろうけど、普通に沢山話せてよかったよな」

「あぁそうだね」

「チキン南蛮覚えてる?」

「あぁ大変だったなぁ」

「食べたいものならなんでも仕入れるぜ、なんてお前が調子いいこと言うから」

「宮崎の『おぐら』な。まさか二人で九州いくことになるとはね」

「いい店だったね」

「そうそう、丁寧にレシピと作り方まで教えてくれたよね」

「叔父さん美味しかったのかな?俺たちがでっちあげたチキン南蛮」

「知らん」

祐樹は笑いながら言った。